ズームアイ

TBRの社員が「経営センサー」に寄稿しています。

永井 知美

トランプ・グッズはMade in Americaか






チーフアナリスト(産業調査担当)
永井 知美

 ニューヨーク、ロンドン、パリと聞いて何を思い浮かべるでしょう。一昔前までニューヨーク=危ない、ロンドン=食事がまずい、パリ=オシャレだったのではないでしょうか。ところが、2017年に筆者が訪れたこの三都市は、予想と大きく違っていたのです1
 筆者が若かりし頃、ニューヨークは覚悟を決めていく所でした。駐車場で強盗に金品を奪われた、夜道で麻薬中毒者に絡まれた等、ろくな話は聞かなかったのです。
 月日は流れ2017年。ニューヨークは有色人種だらけの、のんびりシティに変貌していました。以前の地下鉄は、比較的安全な路線・危ない路線が明確に分かれていましたが、今はどの路線も至って平和。地下鉄某路線でふと前方の座席に目をやると、座っているのは全員有色人種(ラテン系、アジア系、アフリカ系などさまざま)、しかもそのうち2名ほどが爆睡していました。誰だ? 電車で眠りこけているのは日本人だけだと言ったのは?
 夜中までジャズを聴いて裏通りをふらふら歩いても、ブロードウェイでミュージカルを堪能してホテルまで徒歩で帰っても、危険な雰囲気は、ほぼ皆無。
 ただ、一カ所、警察がバリケードまで築いて厳重警備している場所がありました。トランプタワーです。自動小銃を持った警察官が入り口に立ち、中に入るにはセキュリティ・チェックを受けなければなりません。
 地下の売店でトランプ・グッズが売られていました。旅の記念にマグカップ、Tシャツ(Make America Great Againと大書されている)、缶入りミントを買いました。ああ、それなのに、ホテルに帰ってよく見るとマグカップは中国製、Tシャツはホンジュラス製。アメリカ製はミント(缶は中国製)だけでした。まったくもって、言行不一致も甚だしい御仁がいたものです。
 ところ変わってパリ、ロンドン。テロが相次いだ二都市ですが、ロンドンが比較的落ち着いた雰囲気なのに対して、パリは非常事態宣言が発令されていただけあって空気が張りつめていました。
 象徴的なのはエッフェル塔。10年前に行った際は、エッフェル塔の下の広場は誰でも通行可能でした。今はエッフェル塔を囲むように柵が設けられ、入場券を持ってセキュリティ・チェックを受けなければ塔の足元エリアに入れません。パリの景観そのものは相変わらず素晴らしいのに、ぴりぴりムードは残念でした。ただ、以前はお世辞にも愛想がいいとは言えなかったフランス人が、おもてなしに目覚めたのか、ホテルでもレストランでも妙に親切だったのは、嬉しい驚きでした。
 クールが身上のイギリス人は、テロが頻発しても何事もなかったように涼しい顔で歩いています。久々のロンドンで感銘を受けたのは、イギリス人の優しさと男性陣のマナーの良さ(ぶつかりそうになるとすっと身を引いてSorry!と一言。さすが紳士の国)です。帰国時、駅の階段で大荷物を抱えて下りようとしていたところ、70歳くらいの女性から「手伝いましょうか?」と言われて感涙にむせびそうになりました。まずいと言われているイギリス料理も、滞在中、こりゃだめだという料理には一度も遭遇しませんでした。口コミサイトで念入りにお店を選んだためかもしれませんが。
 歳月は人だけでなく街をも変えます。ニューヨークの治安改善は喜ばしいことですが、欧州の治安悪化とテロ頻発の背景に、アメリカの中東政策も影響するIS台頭や欧州各国への難民流入があるのは皮肉としか言いようがありません。

1 ニューヨークは17年5月、ロンドン、パリは同年9月訪問。

このページのトップへ

  • ご利用条件
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ