TBR調査レポート

座談会 日本の製造業を考える

【経済】【産業】【ものづくり、イノベーション】

全体(PDF:355KB)

東日本大震災後の躍進に向けて

 2011年3月の東日本大震災で打撃を受けた日本の製造業は、その後、早急な生産回復を果たし、現在に至っています。一方、震災後に電力供給不足の長期化や事業継続対策の必要性の高まりなどの試練が加わり、これらが今後の日本のものづくりに影響を与えることが予想されています。
 2011年を締めくくるに当たって、日本の製造業がこれまでに抱えた課題を克服して世界で躍進するためにどうすればいいのかについて、当社のエコノミスト・アナリスト3人が議論しました。

座談会出席者 増田 貴司 産業経済調査部長 兼 チーフエコノミスト
永井 知美 産業経済調査部 シニアアナリスト
福田 佳之 産業経済調査部 シニアエコノミスト(司会)
実 施 日 2011年11月15日

<座談会を押さえるための14個のキーワード>
東日本大震災をめぐる「二つのなぜ」、ニッチトップ企業の存在、サプライチェーンの寸断、現場力の強さ、身の丈にあったBCPやBCM、脱原発のための長期的道筋、2種類のオンリーワン、明日のルネサス、技術至上主義からの脱却、ピンチをチャンスに、節電・創エネ・省エネ・蓄エネ、横並び意識の改革、国内と新興国での新事業の同時展開、新興国企業とコモディティ化

東日本大震災をめぐる「二つのなぜ」

<福田(司会)>東日本大震災の発生と復旧には「二つのなぜ」が存在すると思います。一つは、東日本大震災が襲ったのは東北地域の太平洋岸ですが、経済的に同地域を見れば、その規模はかなり小さい。GDPで見ても日本全体の数%程度でしょう。しかし、その経済規模の小ささの割には、東日本大震災による当地の被災は日本全体の生産活動を急落させてしまった。3月は史上最悪の落ち込み幅を記録しています。これが一つ目の「なぜ」です。
 二つ目の「なぜ」は、東日本大震災は輸送機器を中心に生産活動に打撃を与えたわけです(図表1)。鉱工業生産全体は震災前の8割程度、輸送機器に至っては震災前の5割程度の生産しか行うことができなかったのです。そのため、これらの生産活動が震災前の水準に戻るのに1年以上かかるとの見通しが当初提出されていました。しかし、実際の生産活動は、8月にはほぼ震災前水準まで回復しました。その後は欧州債務危機もあってもあってもたついていますが、どうして震災後、予想外に早く生産が回復できたのかが二つ目の「なぜ」です。この「二つのなぜ」について、増田産業経済調査部長はいかがお考えですか。

<増田>一つ目の「なぜ」についてですが、主に二つの理由が挙げられます。一つは、被災地は自動車や電機などのメーカーに基幹部材を供給するサプライヤーの工場、それも高い世界シェアを占める工場の集積地で、これらが被災したことで広い範囲でサプライチェーンが寸断されたことが大きいと思います。もう一つは、震災が原発事故を引き起こし、電力供給の制約につながったことでしょう。福島第一原発を電源として当てにしていた東京電力は管内で計画停電を実施せざるを得なくなり、その結果、関東地域全体の生産活動に影響を与え、それが全国に波及したということです。

図表1 鉱工業生産のレベルの推移(月次、業種別)

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