経営センサー

経営センサー4月号 2018 No.201


ロボット・AI時代に求められる社会、企業、人材とは
東レ経営研究所では、2017年10月31日、経団連会館にて「人とロボット・AIが協働する新時代」と題した、2017年度特別講演会を開催しました。本号では、東京大学大学院 経済学研究科 教授 柳川 範之 氏の講演をご紹介します。

はじめに
東京大学の柳川です。本日は、「ロボット・AI時代に求められる社会、企業、人材とは」をテーマにしてお話ししたいと思います。


米国石化企業の大攻勢は世界を混乱させるのか
―シェール革命の進展と米中石油化学産業の動向について―
【要点(Point)】

(1) シェール開発に基づく随伴エタンの生産増加によって、米国の石油化学産業の競争力は向上している。その結果、大規模なエチレンプラントの建設計画が策定され、建設が進行している。2017年から19年までに900万トン以上のエチレン生産能力、600万トン以上のポリエチレン生産能力が増強される。
(2) 2020年以降のエチレンプラント建設計画が持ち上がっている。これまでのメキシコ湾岸地域だけでなく、大消費地に近くハリケーンの被害がない北東部のアパラチア地域においてもエチレンプラント建設計画が組成されている。
(3) 増産されたエチレン及び誘導品は米国内だけでなく中南米、欧州、アフリカ、アジア等国外に輸出される。とりわけ中国はエチレン誘導品の大需要国であり、最終的には同国で吸収される。中国では需要増加のペースに生産が追い付いていないため2020年代前半までは需要超過が続く。ただし、景気動向等によっては需要が低下するリスクに注意が必要であり、特に2018年以降は米国の利上げが中国金融市場の混乱と不良債権問題の深刻化につながる恐れがある。
(4) 日本の石油化学産業は好調であり、米国からの石化製品の流入の影響も限定的なものにとどまる。ただ、長期的には「ピークオイル」が生じることで日本の石化原料のナフサの調達が困難になる恐れがある。石化原料の最適なポートフォリオを検討する必要があり、それに基づき老朽化する石化プラントを刷新していく必要があるだろう。

サーキュラー・エコノミー時代のビジネス戦略
【要点(Point)】

(1) 欧州で動き出したサーキュラー・エコノミー(CE)とは、天然資源の調達や廃棄物の発生を抑制するための欧州の資源循環政策であるが、新たな産業や雇用を生み出すための「市場創造型」の経済戦略でもある。CEの市場規模は2030年には4.5兆ドルに達すると期待されており、欧米企業はCEをビジネスチャンスと捕え、CE型の新たなビジネスモデルに取り組んでいる。
(2) CEでは、従来の大量生産大量販売という売り切りモデルから脱却し、IoTを活用してリサイクル、シェアリング、製品のサービス化などにより製品の利用頻度を上げ、長期間利用することで廃棄をミニマイズ(最小化)する新たなビジネスモデルが求められている。
(3) @製品のサービス化(Product as a service)、Aシェアリング・プラットフォーム、B製品の長寿命化、C資源の回収・リサイクル、D循環型サプライチェーンという5つのCE型ビジネスモデルについて企業の具体例などを紹介する。
(4) CE型ビジネスモデルの変革に取り組む上では、現状のサプライチェーンにおいて使われていないアセットは何かを見つけ出し、「無駄」を「富」に変えるという視点が必要である。

低成長下での経済民主化に取り組む韓国
―輸出立国から「人中心」の国に変身できるか―
【要点(Point)】

(1) 韓国の文在寅政権は「人中心の経済」を掲げ、所得再分配を重視。大企業・輸出への支援からの決別を謳う。
(2) 「半導体の後」が見つからない。中国の追撃が激化するなか、反企業感情で韓国企業の動きは鈍い。
(3) 世界各地で日本のシェアは回復傾向。韓国企業の動きの鈍化は日本にとって一つのチャンス。

オンライン実践コミュニティで競争力を加速する
短期のビジネス研修で圧倒的な成果を出すにはどうすればよいのだろうか。研修参加者の中には講師のちょっとした言葉に電撃的なショックを受け、人生が変わるような人もいるが、多くの場合、学習者は習ったことの大部分を忘れてしまうのが現実だろう。さらに学んだ内容が本質的(もしくはそれまでの考え方を否定する可能性があるもの)であればあるほど、抵抗感を持つ人が多くなる。抵抗感は精神的ストレスなので、できるだけ早く解消したいと思う。そこで「やっぱり使えない」「うちの業界は特殊だから、このビジネススキルは役に立たない」といった結論を早々に出してしまいがちになる。早く楽になりたいからだ。


企業が関わる地域活性化の事例
―キリン「一番搾り地域づくり」の事例を中心に―
【要点(Point)】

(1) 企業が関わる地域活性化には、地場企業がその地域で取り組む地域主体型と、全国的企業があるテーマで各地の産品や活動に着目し育てる全国支援型がある。
(2) 全国支援型では、大手小売業の産品編集・拡販支援、メーカーの原料調達・地域ブランド型製品開発・販売などがあげられる。
(3) キリンの地域活性化では、47都道府県の一番搾りのようなナショナルブランド(NB)の地域ブランド化や、CSV(Creating Shared Value) 1 的な取り組みに加え、生産者・消費者・料理人をコミュニティ化する新たな動きも見られる。

「希望の残業学」プロジェクトより(前編)
―残業は「感染」「集中」「麻痺」「遺伝」する―
【要点(Point)】

(1) 働き方改革が進行してもフルタイム社員の労働時間は高止まりしたまま。残業発生メカニズムの定量的把握が不十分。
(2) 残業時間 1 は「運輸・郵便」「電気・ガスなどのインフラ業」「情報通信業」で特に多くなっている。
(3) 残業は職場内で「感染」「集中」「麻痺」「遺伝」する。この発生メカニズムを断ち切ることが必要

寅さんと旅と研修
私は大の寅さんファンです。映画「男はつらいよ」のあの寅さん。つい最近も柴又帝釈天近くの「寅さん記念館」を訪ねて、その世界を存分に楽しんできました。いつも旅をしている寅さんが故郷の柴又に帰って来るたびに巻き起こす一悶着や行く先々での一目ぼれと見事にフラれるストーリーはお決まりのパターン。旅は人を成長させるとの一般論は寅さんには当てはまらないようです。しかし、その物語の中で寅さんの口から自然と出てくる一言一言に、深く考えさせられることが私には多くあります。同じ内容を時を置いて見るたびに新鮮な思いをします。

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